第1回 復興支援の旅1 東京都→宮城県

2011年3月11日。
言わずと知れた東日本大震災の発生した日ですが、まさにその2011年3月1日に今の会社に入社しました。東京にいる僕は津波の被害こそなかったものの、交通インフラは完全に遮断されてしまいました。
帰宅困難者となりながらもなんとか帰ることができましたが、そのときの大変さは忘れることができないでしょう。
そうしてそれから半年近くが経過。

少なくとも東京では日常が戻りつつあり、また入社から半年経ったことで自分の周りの環境も落ち着いてきましたが、テレビやネットニュースから流れてくるのは続々と明らかになっていく東北地方の甚大な被害状況ばかり。当地の方々の苦労を考えたら、僕が味わった帰宅困難などほんの準備運動程度にもならないことだったのかもしれません。
そんな考えが芽生え始め、それはやがて自分なりに東北地方を支援できないだろうかという漠然とした思いに変わっていきました。

というものの、行政やNPO主体の復興支援活動などに参加できるだけの長期休暇はさすがに取れません(まだ入社半年ですから・・・)。
そこで考えました。
公休の2日間に有休を1日プラスして3連休にすれば、RVFで東北地方を巡ることができます。そうやって「旅す る」ことで、わずかばかりではあっても復興支援できるのではないか、と。
いつもは極力出費を抑える貧乏旅ですが、この旅に関しては現地でできるだけお金を使って、かの人たちの生活を少しだけですが支えよう、という企画です。僕個人でできることなどこの程度のことしかありませんが、それが少しでも復興の手助けにつながっていけばと願っています。

というわけで、以後(ほぼ毎年)恒例となる「復興支援の旅」の記念すべき第一回目が、2泊3日のトータル約1,300キロの強行日程でスタートしたのです。

この旅のポイントは、事前に日程を調整し、あらかじめ宿泊 施設などの予約をすませた上での旅ということ。つまり、雨が降ろうが渋滞しようが、とにかくこの日程で出発しなければならないということです。しかし無情なことに、天気予報に拠ればお天気はぐずつき気味で、関東から東北にかけては大雨のおそれもあるとか。
ですが延期はできないのです。

当初の予定では夜明けに東京を出発してまずは南三陸町の被災地を訪れるはずだったのですが、前日急な残業で帰宅が日付の変わる頃になってしまっ たことと、加えて雨の心配があるということで、少し予定を変更。
寝不足で事故でも起こしたら大変ですし、どうせ雨に降られるなら少しでも気温が高くなってからの方が体力的に有利だと考えて、通常の時間帯に出発することにしました(そしてもう一つ、出発は土曜日だったので昼間に乗ってもETCの割引率が大きいということもあった)。

そして2011年10月22日午前。曇天ではあるものの、しばらくはこのままお天気が持ちそうなそんな気配を感じつつ、シートバッグをRVFに乗せ、8:30AMに東北地方に向けて出発です!

ただし、降水確率が高く、またそれ以上に結構肌寒かったので、出発時からレインウェアを着用です。このひんやり感、今は心地よいですが、高速道路に入ったら絶対に寒くてたまらなくなりますから。

自宅を出たら、近くの和光ICから外環道川口JCTを経由して東北道に入ります。入ったら、下りるICとなる築館ICに向かって東北道をひた走り。
距離にして400kmほど。途中休憩を挟みながら東北道を駆け抜けます。

最初のうちは涼しい~♪なんて思いながら走っていたのですが、案の定東北道に入る辺りからだんだん体が冷えてきました。レインウェアを着用しておいて正解です。

それでも体は冷えていきます。
そろそろ何か温かいもので休憩をとったほうがよさそう。ちょうど佐野ラーメンでおなじみの佐野SAがもうすぐだったので、東北道で最初に立ち寄るSAを佐野SAに決定しました。

が・・・。

出発したこの日は実は土曜日。それもすでに早朝ではない通常の午前。となれば、想像できると思います。
そう、なんと佐野ICの入り口が大渋滞!SAに進入する車列が本線側道まで侵食しているではありませんか!

そこで佐野SAはスパッとあきらめ、次のSAである上河内SAで暖を取ることに急遽予定変更です。こういう融通を利かせられるのが一人旅のいいところですよね。

お隣の上河内SA到着。
頭の中が(佐野)ラーメンで満たされていたので、ここでも(普通の)ラーメンを注文です(笑)
ハイウェイウォーカーの地図を見ながらラーメンをすすり、この先の予定を確認します。

現在のSAを起点としておおよそのコースとポイントとなる地点を地図上で確認したら、再びレインウェアをまとって出発します。
次の休憩ポイントは、約250km走破となる安達太良SA。このSAを外すわけにはいきません。というのも、RVFは満タンの街乗りでだいたい220〜230kmほど走るので(リザーブも使えば250〜270kmくらい)、250kmを一つの目安にして給油ポイントを配置したからです。

上河内SAを出発後、あと少しで安達太良SAという地点でリザーブへの切り替えが必要になりましたが、無事に安達太良SAに到着することができました。狙い通りなのでこれはちょっと嬉しい(^ ^)

今の所はまだ雨らしい雨に出くわさずに済んでますが、この微妙な空模様はどうしたことでしょう・・・(~_~;;
さて、ライダーは上河内SAで軽食をすませているので、安達太良SAではRVFに143円/Lの豪華な(笑)メニューをご馳走するだけにします(※もちろんレギュラーガソリンです)。
というのも、安達太良SAは福島県ですが、その先にある宮城県にちょうどお昼頃に入れそうだから。だって宮城県といえば、仙台名物の牛タンがありますから!ライダーのランチは牛タンで・・・と目論んでいるのです(笑)
この目論見、成功しますでしょうか?

安達太良SAのある福島県は現在原発事故による放射性物質被害の真っ只中であると同時に、隣接地域への風評被害の真っ只中でもあります。しかし、国破れて山河あり(ちょっと違うか)。

このあたりは爆心地から距離もありますし、木々は普通に秋の色に染まり始めています。花も美しく咲いていました。もちろん放射線被害によって環境に著しい変化が生じている場所もあるのでしょうけれども、決して福島県全体が被曝しているわけではないことを実感します。
このような放射線の影響をほとんど受けていない大部分の自然が、時間をかけてその影響を受けた地域すらも元に戻していくのでしょう。「火は1日で森を灰にするけれど、水と風は100年かけて森を育てる」というのは、そういうことなのかもしれません。

そんな漠然とした感傷にしばし浸ったら気持ちを切り替え、本線に戻って先に進みます。
安達太良SAを出発したら一気に福島県を通り抜け、今回の旅の最初の目的地がある宮城県に入ります!

国見SAあたりでパラパラっと雨に当たりましたが、レインコンディションというほどの天候にはならずに宮城県に入ることができました。宮城県内で昼食をとる目論見であることは先ほどお話ししましたが、実は国見SAの次のSAは、長者原SAまでありません。途中にあるのは すべてPA。
もちろん食事ができるPAだってあるわけですが、やっぱり規模としてはSAのほうがはるかに大きく、目的の牛タンにありつける可能性が高いわけです。
しかし、もしSAに固執して長者原SAまで行ってしまうと、実はそのすぐ次にくる築館ICで東北道を下りることになっていて、ちょっと微妙なカンジ。だって、長者原SAまできたら、もうそのまま東北道をでて一般道に降りてしまいたいじゃないですか。

そこで、PAにだって食事ができるところはあるという希望的観測に基づいてひとまず泉PAに立ち寄ってみました。しかしここはあまりにも小さなPAで、食事をしたり休憩したりという雰囲気ではありません。
四輪なら車内で休憩、ということもできますが、二輪はそういうわけにもいきません。ましてやこの天候ですから、余計に休憩するためのスペースが必要なのです。

というわけで、泉PAは入ってみたもののバイクを降りることなくそのまま素通り。

引き続き、その次のPAである鶴巣PAに立ち寄ってみました。事実上ここが最後のチャンスになります。
というのも、これ以上進むと、築館ICまで一気に行ったほうがよくなってしまいそうだからです。もちろんそれでもよかったのですが、後々のことを考えればやっぱり(メニューはともかく)休息はきちんと取っておかないと、どんなしっぺ返しがくるかわかりませんから。

鶴巣PAの路面はこんな具合でしっかりと濡れていましたが、RVFについている雫は国見あたりで降られた雨の残滓。うまい具合に雨雲の間隙を縫ってここまでやってくることができたのでした。ラッキーですね!

安達太良SAから鶴巣PAはだいたい130kmほど。そしてここから40kmほど走れば築館IC。いますぐ給油を心配しなければならないようなこともなく、また東北道の出口が見えてきたこともあって、時間にも心にも少しゆとりが生まれます。
せっかくですから、ここで少し長めの休憩を取っておくことにしましょう。
幸い鶴巣PAには小さいながらも食事処があるため、テーブル席でくつろぐことができるみたいですし。

そう考えて食事処を覗いてみると、そこにあったのはいわゆる食券販売による食堂と(なぜか)吉野家(笑)。
さすがにここまで来て牛丼を食べようとは思いませんので、食堂の券売機にスパッと進み、メニューを観察します。すると・・・。

ない。ない。ない。; ̄ロ ̄)!!

ないんです、牛タンというメニューが。宮城県なのに・・・orz
やっぱりSA併設のレストランにいかないとこういうのは厳しいのかな~。
がっかりしながらそれでもしつこくメニューを眺めていると、宮城が誇る(?)B級グルメを取り扱っていることが分かりました(牛タンはA級グルメですもんね)。

そのB級グルメというのが、コチラ。

その名もずばり「油麩丼(あぶらふどん)」!

パッと身はカツ丼とか親子丼といった雰囲気なのですが、食べてみるとメインの具材はお麩。それを甘辛のタレと卵でとじてありました。お新香とおみそ汁が付いてお値段500円!

ご飯モノなので当たり前かもしれませんが、思っていたよりもずいぶんとボリュームもあり、お麩の柔らかさと中に刻んで入っているゴボウの歯ごたえとのコラボレーションで食感を楽しめたりと、なかなかどうしておいしくいただきました。

なお、お盆に載って油麩丼と一緒にやってきたスタンプカードは復興支援のスタンプカード。当地のSA/PAで食事や買い物をするとスタンプが押印され、全部たまると定食がただになるんだったか、1,000円分がただになるんだったか・・・。
とにかくそういうヤツです。

往路はともかく、復路は原則下道利用の予定なので、ためることは難しいだろうなとは思いつつ、一応財布にしまっておきました。
・・・が、案の定このスタンプカードはその後使うことはありませんでした。せめて有効期間が数年あれば(笑)

雨の具合も気になるので窓際のカウンター席に陣取って、油麩丼に舌鼓を打ちながら外の様子を確認します。外を見たところで天候が回復するわけではありませんが、状況がわかれば対応策を考えられますからね〜。
で、その外の様子はというと・・・雨は降ったりやんだり。
こういう時が一番決断しづらい!

雲の流れる速さなどを眺めながら、おそらく国見の辺りで追い抜いた雨雲がここ鶴巣PA界隈で追いついてきたのではないかと結論。
ということは、今出て再び雨雲を抜き去るか、いっそ雨雲が立ち去るまでとどまるかという二択です。

食事も済んだので窓越しからの観察をやめ、直接的に雨の様子を確かめるため外に出てみました。空ばかり見ていて気がつきませんでしたが、足元では側溝付近にしっかりとした水たまりができるくらいに本格的な降雨になりつつあるみたいです。
これは仮に今出て雨雲を再び追い抜けたとしてもその間に結構な濡れ鼠になってしまうことは明らかです。

さてさて、どうしたものやら・・・(~_~;;

躊躇いがちにしばらく窓越しに水たまりや雲の流れを観察するも、残念ながら雨が止むことはなく、また止みそうな気配もみえてきませんでした。ただ、幾分小降りになった(ような気がした)ので、ここらで意を決してRVFを始動させ、本線に戻ることに決定っ!
目指すは少し先の築館ICです。一気に駆け抜けるぜ!でも、雨粒が冷たいぜっ!!

程なくして見えてきた築館ICを降りると、目の前に国道4号線。この大通りでまずは給油を済ませます。安達太良SAを出てからもうかれこれ200kmですから。
さすが国道だけあって、見回しただけでもいくつかGSが目に付きます。その中からわざわざENEOSを選んで給油したのですが、なぜかそこはTポイントがつかないGSでした・・・orz・・・無念なり(笑)

ところで今日の宿泊地は宮城県南三陸町歌津のお宿です。
築館ICからその歌津までは(地図上での)おおざっぱな計測で80kmほどですから、迷子になったとしても3時間くらいで着けるはず。
築館ICを降りたのが16:00近くなので、日暮れ前に宿にたどり着くためには少しペースを上げる必要がありそうですが、少しはゆとりを持ってチェックイン予定時間にたどり着けそう(ちなみにチェックイン予定は19:30)。
RVFのガソリンが満タンになったところで、急いで下道旅をスタートさせましょう!

国道4号線からスタートする下道は、沼地の脇を走る県道に入って国道398号線までほぼまっすぐに東進するルートです。
そしてその国道398号線はそのまま国道346号線に乗り入れており、国道346号線はこれまたまっすぐ、太平洋めがけて延びています。

要するに、(少なくとも地図上では)ほぼほぼ東に一直線に進んで太平洋にぶつかるまで進む簡単なコースのはずでした。しかし、現実は甘くない!(笑)
結局ウダウダと道に迷いながらもなんとか国道346号線に入ることができたのでした。
国道に入ればもう迷子になることもないでしょうし、これでなんとなく見通しが立ち始めました(そしてこの予想も甘かった・・・)。

DSC_0017

国道346号線に無事に乗れたことで見通しが立ち始めたちょうどその頃、おそらく下道行程の半分くらい来たであろうあたりにファミマを発見。地図確認も兼ねてコーヒーブレイクをしておくことにしました(なお、そう思って立ち寄ったそのファミマは、後で下道行程の1/3程度でしかなかったことが判明!)。
・・・しかし、時刻はもう17:00を回り、あたりは夕闇に包まれていたりします。暗くなるとそれだけで心細くなるし、何と言っても気が急いてしまいますよね〜。できるだけ気持ちを落ち着けるようにゆっくり目にコーヒーをすすりながら地図を閲覧します。

ところでこの頃はまだ自前サーバでBLOGを開設していなかったので、リアルタイムのBLOG投稿はYahoo!ブログに行っていました。そして立ち寄ったそのファミマで、ここ「中田十文字で休憩してます」ってなことを投稿したら、この近くに住んでいる(と思われる)方からコメントが付いていました(^ ^)
こういうのって、うれしいですよね~。
その方は、牛タンを食べ損なったという投稿も見てくださったようで、仙台でおすすめのお店も紹介してくれました。
この旅は二日目に仙台を通るので、その時に立ち寄って是非ともそのお店でリベンジだっ!(笑)

そんなほっこり(?)エピソードがありましたが、それはそれ。
まだ目的地までは距離があるので、そんなにまったりと休憩しているわけにもいかないのです。
疲れた体にむち打って(?)、いざ出発進行!
ここからあと30kmくらい(実際には50kmくらいあった・・・)。チェックイン予定までまだ2時間近くあることを考えれば、時間的なゆとりはまだ十分に残っています。あせらずに行こう!

しかしこの慢心を諫めるかのように、国道346号線と脇にそれる県道(なのかな?)の西郡街道との分岐の信号を間違って直進して西郡街道に入ってしまい、そのままさらに直進して国道456号線を進んでしまいました(僕の想定では国道346号線を走っているつもりだったので)。
幸い国道456号線に入り込んでから少し進んだところに案内標識があって、そこに表示されていた国道が346号線だったため間違いに気がつけたのでした。
すぐに気がついてよかったです。Uターンして先ほどの分岐に戻ると、そこには左折が国道346号線で あることが示されていました。いやー、よかったよかった。

中田十文字のファミリーマートを出発してから走り続けて約1時間。国道346号線は無事に太平洋岸にぶつかり(海が見えるほど近くはない)、ようやく本日最後の国道となる国道45号線との交差点にぶつかりました!
しかし、もうあたりは完全に真っ暗です。ちょっと不安だ・・・(~_~;;
そしてその不安は的中することに・・・。

国道346号線と同45号線との交差点に、あらかじめ地図で目印にしていたファミマがあることを目視確認。うん、間違いない。
ぶつかったこの道こそが国道45号線であることを確信したら、石巻方面に右折します。日のある時間帯だったら、きっと今僕の左手には太平洋が一望できたに違いありません。
もちろん、真っ暗で今は何も見えませんが・・・。

今日の宿泊地である南三陸町歌津(歌津崎)はこの国道45号線から最後に少し左手に逸れるため(岬の突端部分にある)、その分岐までの大まかな距離と曲がる交差点名とを最終確認しておいたほうがよさそうです。
そこで国道45号線を南下してすぐ、ちょうど左手に見えてきたセブンイレブンに立ち寄って地図を確認することに。
買い物はせず、ただ店舗の照明を借りて地図を確認 するためだけによったのですが、今にして思えばこれが問題だったのかもしれません(買い物せずに場所だけ借りた天罰だったのかも・・・)。

コンビニの明かりを頼りに地図を確認し、現在位置とこの先のコースを記憶したら、すぐに出発。そう、本当にすぐに出発です。なので、ここでエンジンを切らなければよかったのです。
でも、僕は律儀にエンジンをカットしました。エンジンをかけたままでは周りに迷惑になるかもしれませんし、ガソリンも無駄になってしまいますから。
そして地図の確認が済んでエンジンを再始動するためのイグニッションをonにし、セルボタンを押すと・・・。

キュルキュルキュル・・・・ッ!

あれ?おかしいな。

2~3回セルボタンで回して見るも、エンジンはかからずセルがキュルキュルキュル・・・・と苦しそうにうなるだけ。

しかし幸いなことにこのセブンイレブンは坂の頂上。ここから長い下り坂が伸びています。セルでダメなら、じゃこの坂を利用して押しがけでエンジンをかけよう。きっとすぐにエンジンが始動するさ。
・・・最初はエンジンがかかりませんでした。でも坂はまだまだ続きます。そうして何度も何度もセカンドギアでクラッチを繋いでエンジン始動を試みたのですが、一向にエンジンは回りま せん。
何度もなんどもそれを試しているうちに、とうとう下り坂が終わってしまいました。ここは坂道の底辺。行くも戻るも上り坂・・・(T_T)

そして周りは真っ暗!ホントに明かりが全くないんです。
時刻はそろそろ18:30。チェックイン時間が刻々と近づいてきます(もちろんその分距離も近づいてはいるのですが)。
さてどうしたモノかと天を仰ぐ・・・。
強い風に押し出されるように流れる雲間から、ちょうど満点の星が一瞬にして目の前に現れました。なんて素敵なタイミング!まるで星の明かりで全体がうっすらと明るくなったような、そんな数の星が瞬いていたのです!

エンジンがかからないがゆえに見ることができた偶然の景色。
ですが状況が状況だけにとてもその景色を楽しむだけの余裕がありません(息を飲んで一瞬魅入りはしましたが)。
何と言ってもここは震災の中心地。変なハナシですが、いつまた余震が起こってもおかしくはないのです。
通る人「ゼロ」、通る車ほぼ「ゼロ」、明かりほぼ「ゼロ」。圧倒的な孤立感です。

ダメ元で再びセルを回して見るも状況は変わらず。あまり回しすぎてバッテリーがらみのトラブルに発展しても困るので、ひとまずイグニッションもOFFにしたら、これまた大変!
まったく明かりが無くなってしまいました・・・(T_T)
さっきまで見えていた満点の星空は、今ではすっかり厚い雲に覆われて見えなくなり、地上も空も暗闇に包まれてしまっています。

はっきり言ってコワイです・・・。

ここじゃロードサービスも期待できないし、頼めたところで取りに来るのにずいぶんと時間もかかってしまうでしょう。
ですが、途方に暮れかけたその時に気がつきました。時刻はまだ18:30前後。
なんだ、バイク屋さんがまだやってるじゃん!状況を説明すれば何か解決のヒントが得られるかもしれません。
さっそくスマホを取り出してバイク屋さんに連絡を入れます。

そしてやりとりすること数分。
・・・キルスイッチがOFFになっていたことが原因と判明・・・orz

かかなくていい恥をかいたことを後悔しながらバイク屋さんにお礼を言って、再び出発です。とんでもない理由による足止めを食ってしまいましたが、残りの距離だけを考えればチェックイン予約時間には間に合うはず。
坂をあがり、川を越え、橋を渡り、先に進んでいくとだんだんと国道は海に近づいていきます。ほのかに漂ってくる潮の香りをかぎながら走っていると、道路に舗装のはがれたところが現れ始めました。
そしてポツポツと津波被害発生時の津波到達予想地点の表示なども眼にするようになってきました。着実に被災地に近づいているということを、嫌が応にも意識せざるをえなくなっていきます。

そうして進むうちに、路面は単にアスファルトが剥がれたということではなく、道そのものが壊れている、そういう場所が現れ始めてきました。
この壊れ方、地震によるものとは違うようです。ということはつまり、津波がここを襲い、そして破壊していったということなのでしょう。

半ば砂利道やダートになっている路面状況に気を配りながら進むと、追い打ちをかけるように新たな障害が!
それは、キリ。
真っ暗な闇の中をチョット頼りないRVFのヘッドライトだけで進んできましたが、 今度は一転、真っ白な世界に放り込まれ、頼りないRVFのヘッドライトは乱反射を起こします。
ときおりキリが晴れればそこは暗黒世界。もう気分はX- Filesです・・・。

そんな状況下ですので、だんだんどこを走っているのか分からなくなってきます。しかし、地図で確認した限りでは国道45号線を左折できる道は県道225号線だけ。つまり、走っていて左折できる(それなりの)道が出てきたら、標識が無くてもそれが県道225号線のはずなのです。

多分ここかな?というところに出たときに、おそらく巡回中だと思われるパトカーがちょうどいいタイミングで走ってきました。
道を聞こうかな?とも一瞬考えたのですが (そして向こうもコチラが旅人であることがわかったようでしたが)、じゃらんに掲載されていた地図でもここから一本道だったし、多分大丈夫だろうと考えて (今思えばこれも判断の誤りでした)その道を左に入っていくことに。

しかし、国道ですら所々路面がはがれた状態だったのですから、より海に近づく県道の状態は推して知るべし。えぇ、進んでいった先は道とは呼べないような状態の場所も散見される、もうほとんどオフロードコースでしたとも。

街灯もなく、月明かりもなく、路面はぼろぼろ。道路の先の状況は全く不明。
それでも先に進んでみましたが、だんだんと道は細くなり、それに合わせて僕も心細くなっていきます。
そしてとうとう時刻は19:00台に突入してしまいました。これは・・・チェックイン時刻に到着ができるかどうか微妙な情勢になってきたな〜・・・。
そもそもこの道は県道225号線なのだろうか?(後で 確認したところ、この道はやはり県道225号線で間違いありませんでした)

こういう時は宿に電話をして応援を仰ぐのが正解です。ってゆーか、もうそうする以外に方法が思いつきません。

宿にTELを入れてこの先何を道しるべにして進めばいいかを教わり、チェックインが遅れるかもしれないことを伝えることができたので、気分的に少し楽になり、ホッと一息。
落ち着いたところでふと周りを見渡すと・・・その場所は、仮設住宅が寄り添って立ち並ぶ場所でした。
その仮設の家々からは明かりが漏れてきていましたから、(当たり前ですが)中には被災された方々が中にいらっしゃったわけです。
そんな場所で、趣旨はどうあれ旅行者が宿泊施設に電話をかけている。
何となく身につまされる思いがしました。

教わった通りの目印を探して何度か国道45号線を行ったり来たりしてしまいましたが、やがて説明された「セブンイレブンとそのはす向かいにガソリンスタンドがある交差点」という場所が見えてきました。
あぁ、ここが説明された曲がり角か!とその道を左折。

左折後すぐに今日の宿泊施設の看板を発見!どうやらこの道で間違いないようです。

・・・でも次の看板までの間隔が長い・・・(^ ^;;
それでも何とか道なりに進んでいきます。RVFには不向きな破壊された道を、パンクに気をつけながらゆっくりゆっくり進みます。
気がつくといつの間にか濃霧は小雨に変わり始め、それに合わせて気持ちも焦り始めます。
不安に駆られる心を抑えて、アクセルは極力開けずに慎重に先に進みます(直前の路面の状況すらよく分からないのですから)。

灯りひとつなく、周りにどのような景色が広がっているのか全く分かりません。地図上だとすぐそばに海岸線が走っているらしいのですが、今やその空気を感じ取ることはできませんでした。
何もない(ようにしか思えない)道を気を配りながら進んでいくと、やがて廃墟と化したガソリンスタンドが現れました。RVFのヘッドライトに不気味に浮かび上がる廃墟・・・。

しかしこの廃墟のおかげで、ちょうど対向を走ってきた軽トラックとすれ違うことができました。ここがなければ、いかに細身のRVFを持ってしても軽トラックとすれ違うことができなかったであろうほどに、道はかろうじて細く続いているだけだったからです。
RVFをこの廃墟に乗り入れる形で対向車とすれ違ったので、そのままこのガソリンスタンドにRVFを駐め、再び宿に連絡を入れます。一本道だったので、よもや道が違うということはないと思うのですが・・・。

廃墟のガソリンスタンド前にいることを伝えたら、そのもう少し先にありますとのことでした。
ヨカッタ、道は間違ってなかった!

そうしてしばらく進むと・・・あった!!とうとう到着しました!!

本日お世話になる宿、「ニュー泊崎荘」さん。

まずは宿の前で到着記念に一枚・・・といきたかったのですが、いかんせんあたりはすでに夜、というか、闇。暗闇です。
なので撮影は後日に回すとして、バイクを邪魔にならなさそうな適当なところに駐めてチェックイン手続きに向かいます。
チェックイン予約時間を40分ほど過ぎ、現在時刻は20:10。事前に連絡を入れておいて正解です。
夕食の付くプランで予約を入れているので、無断でチェックインが遅れると宿にも多大なご迷惑をかけてしまいますからね〜。

ざっと宿の案内を受け(お風呂とか食事とか)、スタッフさんにお部屋へ案内されました。お部屋から海を見ることは叶いませんでしたが(部屋は宿任せのプランで予約しているので仕方がない)、一人で泊まるには十分すぎるくらいの広さです。
すでにお布団も敷かれていて、これならいつでもだらけることができますね!(笑)

宿のご厚意で、食事の前にお風呂のための時間を作っていただきました。食事の時間をさらに30分ほど後ろにずらしてくれたのです。
となれば、早速お風呂へGO!
岩風呂と内風呂があったので、とりあえず岩風呂に入ってみることに。

洗い場が3カ所の比較的こぢんまりした岩風呂でしたが、なんと貸し切り状態!
のーんびりさせていただきました♪
(当時はまだ旅慣れていなかったので撮影していませんが、今ならきっとお風呂の写真を撮ったに違いない)

お風呂から出たら浴衣に着替え、食事処に向かいます。今回はお部屋食ではないので、食堂(というか座敷)に移動し、そこでいただくのです。

お部屋から食事処まで歩いていると、あちこちの部屋に「○○様」とか「○○ご一行」といったような札がかかっているのがわかりました。
もちろん週末と言うこともあるのでしょう、満室 とは行きませんでしたが結構なお客様が来ているようでした。中には関東からと思われるグループ名もありました。
そして地元の関係者と思われる団体名も。

実際、食事処の向かいの大部屋では盛大に宴が開かれていましたし、私が食事をした小さな座敷でも(すでに終わっていましたが)4~5名のグループの食事が用意されていました。

みんな、それぞれが自分にできる色々な形で復興を後押ししようとしているのかもしれません。そう思うと、少しだけ心がほっこりしますね(^ ^)

そして食事処に入ると・・・。

さすが海のすぐそばのお宿だけあって、海産物がたくさん!

美味しそうです!これこそ旅の醍醐味ですよね〜(^ ^)
遊ぶための旅行ではないのですが、楽しみは楽しみ。別物ですよね♪

ご飯やホタテバター焼きは固形燃料に火をつけてその場で炊き上がり・焼き上がりを待ちます。できあがるまで20分ほどかかるそうなので、その間にビールで(一人で)乾杯です!
お疲れ様でした!(笑)

おつまみになるお料理がたくさん。そしてお腹がふくれるご飯料理もたくさん。これだけ飲んで食べれば大満足です。
ちなみにデザートは宿の女将さんの娘さんお手製です。というのも、そのお嬢さんは実はパティシエールなんだとか。

ちょっとしたトラブルに見舞われたり、見通しのきかない悪路を走り続けたりして心も体も疲れきった後に温泉の癒しと冷えたビール、そして炊きたての混ぜご飯にデザートまで。
となれば当然にもう身も心もホワホワです。要するに、眠さ絶頂!

幸福感でふらつきながら(笑)お部屋に戻れば、そこにはもうお布団が敷かれているわけで。
ソッコーで布団に潜り込みましたが、しかしすぐに寝るわけにはいきません。何をしていたかというと、BLOG投稿・・・。緊張も感動も忘れないうちに投稿しておこうと思って(リアルタイム投稿はあとで記事にまとめる時に有用ですから)。

こうして活動の大部分が移動という行為に費やされた一日目の夜は更けていき、力尽きた僕はそのまま深い眠りに落ちていくのでした。
おやすみなさい・・・。

二日目に続く

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